インターネット社会で営業マンはいらなくなりますか?この世界は思ったより混沌としています
営業(セールス)のおじさんって何してる人なの?そのうちいらなくなるんじゃない?
学生の皆さんや、会社員のみなさんは営業職(セールス)にどんなイメージを抱いていますか?
飛び込み営業、受話器と手をガムテでグルグル巻き、プルデンシャル生命、ウルフオブウォール・ストリート、ゴリラ、飲み会、接待、ツーブロック、カラオケ、きついノルマ、激詰め、会社にいない、チャラい、無理な契約を取ってくるクソ野郎、事務処理のできないチンパン野郎、 などなど。
あんまりいいイメージを持っていない、実際何をやってるかわからない…なんて人も多いんじゃないでしょうか。

売上チンパン野郎
今後インターネットや人工知能をはじめとするテクノロジーの進化で、ネット上でどんな情報でも手に入って、どんな物でも買える世界がくれば、そのうち面と向かって商品を売り込むセールスマンのおじさんなんて要らなくなるんじゃないの?なくなる仕事じゃないの?そんな風に思ってる方もいらっしゃるかもしれません。
答えはNOです。
わたしは外資IT企業でセールスエンジニア(営業のおじさんのテクニカル部分の補佐)として数年やってきまして、時にはプレゼンに横槍を入れ、時には赤坂の飲み屋で黒霧島片手に「お嬢ちゃん、営業っていうのはね…」的なトークを散々ぱら聞き続けて、なんとなく営業とは何の仕事なのかがわかってきたので以下で解説します。
情報の不整合:世界はあなたが思っているよりもひどく混乱している
突然ですが、旧約聖書の話をします。バベルの塔ってご存知でしょうか?
全ての地は、同じ言葉と同じ言語を用いていた。東の方から移動した人々は、シンアルの地の平原に至り、そこに住みついた。そして、「さあ、煉瓦を作ろう。火で焼こう」と言い合った。彼らは石の代わりに煉瓦を、漆喰の代わりにアスファルトを用いた。そして、言った、「さあ、我々の街と塔を作ろう。塔の先が天に届くほどの。あらゆる地に散って、消え去ることのないように、我々の為に名をあげよう」。主は、人の子らが作ろうとしていた街と塔とを見ようとしてお下りになり、そして仰せられた、「なるほど、彼らは一つの民で、同じ言葉を話している。この業は彼らの行いの始まりだが、おそらくこのこともやり遂げられないこともあるまい。それなら、我々は下って、彼らの言葉を乱してやろう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように」。主はそこから全ての地に人を散らされたので。彼らは街づくりを取りやめた。その為に、この街はバベルと名付けられた。主がそこで、全地の言葉を乱し、そこから人を全地に散らされたからである。— 「創世記」11章1-9節
「人類がテクノロジーの発展とともに調子こいてると神様が激おこして塔をブチ折り、言語をバラバラにした」という旧約聖書版、賽の河原ともいえるお話です。
これは昔話ですが、そのまま今この世界の成り立ちを表しています。インターネットが世界中の情報へのアクセスをフラットにし、民族間の相互理解が進んだとしても、地球にはたくさんの国境がありますし、文化の断絶がありますし、数百の言語があるのが現実です。これは、情報が十分に流通されておらず、不整合を起こしているということです。
上記の「全ての地が同じ言葉と同じ言語を用いている世界」=「情報の不整合(非対称性)がない世界」だとすると、仮にそうならどれほどこの世の文明が進歩して、争いごとがなくなることか…と思いませんか。文鳥はそう思います。
文鳥もそう思います。
— 文鳥もそう思うbot (@bun_thinksotoo) November 5, 2018
この世はめちゃくちゃ非効率なのです。
お買い物にあてはめて考えると、私たちは何も知らないことがわかる
ここでお買い物にあてはめて考えてみましょう。
あなたは、新生活に備えてパソコンが必要になりました。パソコンを上手に買うためにやることは?
- ネットでスペックと値段を調べる
- 口コミサイト等でレビューを確認する
- 知り合いのオタクにオススメを聞く
- 家電量販店で店員の説明を聞く
こんなところでしょうか。価格・性能・ユースケースを調べて、自分のニーズにマッチしているかを確認しているってことですね。
これが、個人が10万やそこらのパソコンを買う話ならばネット上ですべてが完結するかもしれません。しかし、お父さんがローンを組んでマイホームを買う場合ならどうでしょうか?あるいは、会社の社長が事業を買う場合はどうでしょうか?仮に文鳥が大富豪だったら、クリックひとつで家を買ってますが、そうはいきませんよね。

アマゾンで家ポチー
一点もののマイホームでは、ネット上に口コミはありませんし、実物を見てみないと細かい間取りや日当たりやご近所の様子はわかりません。もしかしたらネットで見つけた物件よりも、もっと自分たち家族に合っている家がこの世にあるのかもしれません。
インターネットだけで手に入る情報はごくわずか。私たちは、お買い物をする時あまりにも商品のことを知らないのです。
ソクラテスの無知の知ってやつですね。余談ですが、ソクラテスはラッパーの漢 a.k.a. GAMIに似ています。
営業マン(セールス)のお仕事は、情報の不整合(非対称性)をなくすこと
マイホームってどう買えばいいの〜?ローンってどうやって組むの〜?何もわからない、何も…となっているところで、営業マンが登場するわけです。
彼らがやっていることはざっくりこうです。
「どんな家が理想ですか?」「予算はどれくらいありますか?」「キッチンが広い方がいいですか?」「駅から近い方がいいですか?」「犬を飼いたいなら、庭があったほうがいいですね」「この予算だとどれかの条件を削らなければいけません。優先度が低いのは駅歩?広さ?」といった質問でニーズを引き出して優先度を定義し、
「こんなオプションはどうでしょう」「20代のご夫婦だと予算に合わせるためにこういうところを妥協するケースが多いです」「補助金の制度があります」といった情報を与えることでギャップをなくし、
契約に到るまでの障壁を取り払うべく支援を行います。

最近だと、ローンの組めないアパートオーナーのために、スルガ銀行の営業マンが一肌脱いで預金残高を粉飾してくれるっていうのも、立派な購入のご支援ですよね
これはかなり高度かつ複雑な知的労働です。情報の開示にはたくさんの業者間の複雑な思惑が絡み合うためオープンにはならず、インターネットショッピングとWEB広告だけでは埋めきれない深い深い溝があります。それらの溝をひとつひとつ橋渡ししているのが、営業のおじさんたちというわけです。
人間は論理(ロジック)だけで物事を決めない
扱っている商品の金額や種類にもよると思いますが、複雑かつ高度なセールスプロセスにおいて、もっとも大変で営業マンの腕の見せ所になるのが上記の3番目の「意思決定(購入)までのプロセスを手伝います」の部分です。
事実、競合他社よりも圧倒的に納期が早く、価格も安く、機能もいい、プレゼンも最高の評価だったのに何故かコンペに負けました!!!なんてことはよくあります。本当によくあるんです。
後日、半ギレでクライアントの担当者に聞いてみると、こんな答えが返ってきます。

どうしてですか?弊社のやつが一番いいって、あんなに仰ってたじゃないですか…。

いやー私もこれしかないと思って取締役会にかけてみたら、会長の鶴の一声で、古くから付き合いのあるXXX社に任せておきなさいと言われてしまって…。ごめんね。
なるほど。ごめんねじゃねーよ💢
この時、コンペに勝ち抜くために営業マンがしなくてはいけなかったことは、こうです。
クライアントの意思決定フロー(取締役会)を把握し、真の意思決定者(会長)を見抜き、その周囲を口説き落としつつ、担当者にはもっと会長のハートに響くような材料を持たせて取締役会までコーディネートしてあげるべきだったのです。
これはいわゆる「政治」ってやつです。
会社という組織が物事を決める際、そのプロセスは皆さんが思っているよりも全然ロジカルではなくて、複雑な政治やウェットな感情(センチメント)を以って意思決定をするのです。それらを時にロジカルに・ドラマティックにコントロールし、1ミリでも自社が有利な契約へ手繰り寄せることが、営業マンの存在価値そのものと言えます。
まとめ
ある日、新宿三丁目のワインバーで某外資IT企業の営業をやっている友達が言った言葉が好きで、よく思い出します。
とのことです。彼は他にも
とも言っていました。文鳥もそう思います。
文鳥もそう思います。
— 文鳥もそう思うbot (@bun_thinksotoo) November 5, 2018