ビットコインキャッシュのHashWarに伴うBTC価格の大型下落について
ビットコインの取引価格が11/19から本日11/21にかけて割らない割らないと思われていた$6,000の防衛ラインを下にぶち抜き、年初来の下がり幅を見せながら、数多の投資家たちの心と財布を破壊しました。
税金未納者刈り取りに向けてウォーミングアップ真っ最中の国税局を尻目に、今年は納税しなくても大丈夫ニキがかなり増えたんじゃないでしょうか。
今回のBCHハッシュウォーに伴うBTCの大型下落について、わかっていることをおさらいしていきましょう。
発端はBCH(ビットコインキャッシュ)のHashWarだった
10月末ごろに、BCH(ビットコインキャッシュ)内部の音楽性の違いによって仲間割れが発生し、敵対的ハードフォーク(ブロックチェーンの分岐によるコインの分裂)の予定が発表されました。それにより、BCH市場は一時ハードフォーク前の期待買いが起こり、閑散としていた仮想通貨相場に数ヶ月ぶりに出来高が戻って来ました。
BCH陣営において大きなイニシアチブを持つJihan Wu、Roger Ver、Craig S Wrightがそれぞれのビットコインキャッシュに対する方向性(利害関係)の違いにより、ビットコインキャッシュをBCHABCとBCHSVへ分裂させるハードフォーク案を出したのです。それぞれの陣営の出すイシュー、仕様案は非常に複雑で、市場参加者の多くにとって、ハッシュウォー(どちらが正当なビットコインキャッシュとして存続するか、あるいは分裂しないのか)の結果を正確に予測することは不可能でした。
詳しい経緯はMakiさんの記事を読んだらわかると思います。
この当時のBTC価格は70〜73万円を推移し、堅調かに見えました。
直前のTether疑惑とUSDTの信用不安
上記騒動の少し前である10/15に、Tether社の資産の信用力に対する不安が起こり、本来$1にペッグされているはずのUSDTが$0.7付近まで下落するという珍事が起こりました。これはクリプト市場において何度も持ち上げられてはビットコイン価格下落の材料にされているお決まりのネタです。
するとBinance、Bitfinex等 世界最大級のビットコイン取引所におけるUSDT建のビットコイン価格は相対的に急上昇することになります。ビットコインが6,000ドルの価値であることは変わらないのに、USDTの価値が下がっているために6,400USDTまで高騰している(かのように見える)という不思議な現象が起こったわけです。
よくよく考えてみれば、これは今回の下落の布石のひとつでした。USDTに代わるステーブルコインの台頭によって、市場心理は安定を取り戻し、忘れっぽいクリプトマーケットにおいて案の定数日で風化された事件です。
狂人クレイグ・ライト、BCHの分裂劇から泥沼のHashWarへ
前述したBCHコミュニティのうちの1人、クレイグ・ライト博士(自らをサトシ・ナカモトと公言するアレな人)はBCHSV(satoshi visionとかいうアレな名前)の支持を表明します。
対向のBCHABC陣営には世界最大のマイニングプールであるBitmain他、多数の取引所が支持を表明しており、当初のクリプトマーケットの下馬評では、なんだかんだ言ってBCHABCの勝利と目されていました。
形勢不利になったクレイグ・ライト氏は以下のような煽りTweetを連発します。
To all BTC miners…
If you switch to mine BCH, we may need to fund this with BTC, if we do, we sell for USD and, well… we think BTC market has no room… it tanks.
Think about it. We will sell A Lot!
Consider that….
And, have a nice day(BTC to 1000 does not phase me) pic.twitter.com/oUScEahtWc
— Dr Craig S Wright (@ProfFaustus) November 14, 2018
意訳:すべてのBTCマイナーに告ぐ。もしお前らがBCH(ABC)のマイニングをはじめたら、我々の所有しているBTCを売ってドルで(BCHSVのハッシュパワーを)補填する必要がでてくる。めちゃくちゃ売るので、ビットコイン市場が耐えられるかどうか、考えてみてほしい。
ちなみに、個人的にはビットコインが$1,000 になっても全然問題ないと思う。
彼は最初期からのビットコインコミュニティの人なので、当然大量のBTCを保有しています。BCHSVのハッシュパワー存続のために、それらを売却してハッシュパワーに替えると言い出したのです。
これで多くのマーケット参加者にとって対岸の火事だったHashWarの戦場が、ビットコイン市場にまで広がりました。
Any use-case for ETH no longer exists following the confirmation by the @SEC_News on ICOs. All as I have been trying to say for years.
Next target, XRP. Another illegal unregistered security platform to take down.
— Dr Craig S Wright (@ProfFaustus) November 17, 2018
ノリに乗った彼はXRP(リップル)ETH(イーサリアム)にまで言及し、HashWarの戦場を主要アルトコイン市場にまで広げます。
彼のTwitter上での大人気ないレスバトルによって、PoWの非中央集権コインの価値とシステムが特定のプレイヤーのパワープレイによって容易に破壊しうることが確認され 相場のセンチメントは一気に悪化します。それに伴って仮想通貨マーケット全体から資金がどんどん抜けていく結果となりました。

わしらが今まで買ったり売ったりしてたものは何や?砂か?砂の城を建てて遊んでたんか?
(-coinmarketcap total market capitalization)
ハッシュウォーは面白くて、大国同士がなぜ核戦争や総力戦をしないか?っていう理由を見せてくれたね
総力戦になると、プレーヤーのほとんどに利得がなくなるからやらないっていう合理的な判断を大国はしてるっていう
クレイグ氏はこのハッシュウォーでかなり力を落としただろうからもうできないでしょ— Ituki Sasamori (@gelmanes) November 20, 2018
BCH分裂劇場と狙いすましたタイミングの強烈なファンダ
本物のBCHの座を巡り争うジハンとクレイグ。
だが二人の間には、ある特別な秘密があったー映画「The Hash War」
邦題「恋するビットコイン・キャッシュ」 pic.twitter.com/upHEx3vtDK
— Cinnapple (@CinnappleFun) November 21, 2018
今回の主要な登場人物はRoger、Jihan、Craigですが、彼らが2017年夏にビットコインキャッシュの敵対的ハードフォークを仕掛けたやり口を参照すると、全員一筋縄ではいかない腹黒い大人だったということが思い出せます。Bitmain社をIPOをしたJihan Wuに限って言えば、まだ多少株主たちによるコントロールが効いている(可能性がある)かもしれませんが、そもそもが聖戦を謳って市場参加者を無理くり巻き込んだマネーゲームを一年前に仕掛けた人たちです。
というのも、BTC価格がまさに直近底値の$4,000 をかすめた11/20に気になるニュースが2つ出ました。
Bakktの延期と、米司法省によるTether社への捜査開始のニュースです。
ようやく米司法省が昨年のテザーパンプ疑惑に捜査のメスを。
Bitcoin-Rigging Criminal Probe Focused on Tie to Tether https://t.co/VxF3DJtonh
— mineCC (@ETHxCC) November 20, 2018
JUST IN: The launch of Bakkt's physically-settled bitcoin futures product has been pushed back to January of next year. https://t.co/qn1kDI8gVV
— CoinDesk (@coindesk) November 20, 2018
それぞれビットコインへの強烈な逆風となるマイナスのファンダメンタルです。このうますぎるタイミングは果たして偶然でしょうか。
悪い大人たちが考えたシナリオ
ここからは状況証拠を寄せ集めた妄想です。きっと答え合わせも不可能です。
- 悪い大人が米司法省のTether捜査とBakkt延期のニュースを秘密裏に知る
- 悪い大人を集めてビットコインおよびビットコインキャッシュを大量にショートする
- 悪い大人たち数人で仮想通貨市場全体を巻き込んだ分裂プロレス劇場をはじめる
- 悪い大人たちの持っているビットコインを売り浴びせする
- 1のニュースが世に出てさらなる下落が起こる
- 安くなったビットコインを買い戻す(再生不可能なら買い戻さない)
こういう勘ぐりができてしまいますし、過去の素行を鑑みるに、想像が難しくない陰謀です。この悪い大人たちは誰かというと、言わずもがなの前述3人ですが、そもそも彼らも表舞台に表出している一部分に過ぎない可能性があります。
そういえばビットコイン年内$5,000 予想をした、某ビットコインのショートができる取引所のCEOもいました。某取引所では今回の下げ仕掛けで凄まじい金額のロスカットによる大量の成行注文が発生したため、とんでもない規模の手数料が発生したことが予想できますね。
ヤクザ、911 pic.twitter.com/va6TxHEhBk
— 平成最後のザハ (@ripple_chan) November 21, 2018
むずかしいイベントが起こった時には「これによって誰が損をして、誰が得をするのか?」から考え始めると、いろいろと捗ることが多いです。おぼえておきましょう。市場経済においては大抵 得する奴が悪いことをやります。カルロスゴーン氏の逮捕劇件もそうです。ゴーンの横領は事象全体の一部でしかなく、裏ではもっと大きな利害が動いていて、そのシナリオを書いた人がいます。我々が決して知り得ないレイヤーで。
規制だなんだのと盛り上がっていましたが、仮想通貨市場がいかに未熟でヤクザだらけの魔界なのかということを思い出させてくれた事件でした。決して中央集権ならこれが起こらないわけではないですし、非中央集権が悪いということではありません。現状の仕組みも市場も何もかもが未熟だったゆえに、やんちゃボーイたちが比較的何でもできる自由な市場だったというオチでした。
こういった陰謀論においては、多くのケースで利害関係と状況証拠での推理に終始してしまいます。「そうに違いない!お前が犯人やろ!」と本人を問い詰めたところで、具体的な確証を押さえて突きつけない限りはイキったバカのコナンくん止まりです。ビジネスシーンにおいて、フワッフワの状況証拠で他人を断罪していいのは海沿いの岸壁での船越英一郎のみ。注意しましょう。文鳥もそう思います。